離婚に向けて、別居をしたいが進め方が分からない方

離婚や夫婦としての「冷却期間」をもうけたいとき、まず検討されるのは「別居」であると思います。夫婦は、同居義務があるので、別居はその例外ということになります。しかし、別居が事実行為とはいえ、法律専門家のアドバイスを受けて行わないと「悪意の遺棄」であるとか、同居を求める審判を求められ揉めてしまう恐れがないとまではいえません。また、DVの場合はこどもをめぐる奪い合いに発展することもないではありません。

日本の民法の離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由」は、主に、「長期の別居」が該当するものとされています。
また、離婚してまで同居する元夫婦はいません。
したがって、離婚に向けて、別居を進めるのは、示談交渉ないし調停で、調停委員などに「本気度」を伝えるためには避けられないといえると思います。
別居をしていないと、第三者的には離婚への「本気度」が伝わりにくいし、真摯なあっせんを受けられない可能性があると思います。
ただし、別居も信義則に反する態様はダメとされています。
例えば、自分の両親の介護を任せておきながら、自分は別居したから、婚姻破綻を主張するなどというのは、信義則に反する可能性が高いと思われます。最近は表面的なインターネット記事を否定する裁判例も出ており弁護士の経験も重要ではないでしょうか。

さて、みなさんが、離婚に向けて、別居をしたいが進め方が分からないという法律相談はよく聞く話です。特に、女性も、男性も、「別居できない理由」を多く挙げられる傾向にあるように思われます。
特に住宅ローンがある自宅の場合は、男性が別居する場合、1)自宅先、2)別居先とダブルで住居費を負担せざるを得ない可能性があるため、なかなか別居に至らないケースが多いといえるかもしれません。
また、こどもの学校などを別居しない理由として、言い分にされる方もいます。
他方、女性ではこのような事情がないことから、特に職業に就いている女性を中心に比較的別居をなされているのではないかという感じ、印象を受けています。
別居先としては、もちろん、市営住宅なども考えられますが、離婚を目指した別居は、暫定的かつ緊急のものであるので、まずは、実家に身を寄せるなどのパターンが考えられます。

離婚前に、必ず別居をしなければならないわけではありません。
しかし、離婚において、別居をしておくことが多いのは、

  1. 相手方に離婚のイメージを持たせやすい(別居すれば、家事労働の提供はない、こどもへの簡単なアクセスができなくなる、婚姻費用の支払いが生じる)ということがあるのではないかと考えています。
  2. また、裁判所から、「同居のまま」離婚調停をしても相手にされない
  3. 仲の悪いもの状態の同居が続くことにより、突発的なDVが生じる懸念がある
  4. モラハラやDV被害のため、別居して公平性を取り戻した方が、公平な話し合いに資するから
  5. 家計が別々になり、実質婚姻破綻が進む

といえると思います。

1.本来は、「別居協議」をすることが望ましいが・・・

夫婦が別居をする場合、1)婚姻費用、2)面会交流の実施要領を決めることが多いといえます。したがって、当事者間で、上記1)婚姻費用、2)面会交流の実施要領が決められるかが問題となります。
特に小さいお子さんがいるところでは、葛藤が高くない夫婦では、面会交流の合意も含めて行っていただきたいところではあります。
しかし、実際のところ、高葛藤案件も少なくなく、「別居協議」はまとまらないことも少なくありません。
この場合は、一方が、別居をしたうえで、その直後に、1)婚姻費用調停、2)離婚調停、反対側が3)面会交流調停を起こすことが多いといえます。
この場合、とりあえず、1)婚姻費用調停、2)面会交流調停-をまとめるのが、「別居調停」といわれることがあります。
上記のように、本来は「別居協議」をすることが望ましいのですが、家庭内暴力ないし激しいモラルハラスメントによって、家を出ないと自分やこどもが危険という場合は、できるだけ早く決意して別居すべきものとされています。
実際上、離婚話を切り出すよりも、「冷却期間」であることを前提に別居の切り出しの方が、相手方と高葛藤になりにくいのではないかと思います。

2.離婚の前に別居を先行させること

離婚を考えだしたら、相手方の姿を見るのも嫌だという気持ちになるかと思います。
そこで、冷静な話し合いを可能にするため、また、DVやモラルハラスメントからの不当な支配を抜け出した公平な交渉を実現するため、離婚を決意する前に別居をすることが増えています。これは、別居をするにあたり決めることは、婚姻費用と面会交流だけと比較的少ないことが考えられると思います。

3.DVの場合の別居

弁護士によるインターネットサイトの解説によっても、見解が分かれたり記述がなかったりするところですが、こどもの連れ出しに関しては、「主たる監護者」が引っ越す場合は、それに伴って監護下にあるこどもも引っ越すと考えるのが相当と理解されています。
そのため、別居するあなたがこどもの「主たる監護者」の場合は、必ずこどもを連れて出るということが「子の福祉」や「裁判所の判断基準」に沿っていると思います。離婚してから引き取るということはできませんので、こどもを置いてくるということは親権をあきらめるということになりますので、十分注意してください。
他方、連れ去られてしまうと親権を得るのは難しいので、真摯な協議を申し入れ、実力行使をしないようにするようお願いしておくことも大事ではないかと思います。
このように、こどもの引き取りをめぐって、いずれが「主たる監護者」であるとか、監護者として著しい不適格事情をめぐって、別居前後は高葛藤が生じやすく、また警察沙汰もないわけではないといえることから、最近は別居前から弁護士にご依頼いただいくことも増えています
暴力や浮気を証明できるような証拠があれば、裁判に備えて、これをもって出るのが相当と思います。一度家を出てから、引きとりに帰ることは相当ではありません。

4.別居にあたって、検討・準備すること

一度、別居してしまうと、相手方の承諾がない限り、自宅に立ち入ることが困難になると解するのが相当です。具体的には住居侵入罪が成立する恐れもあります。
そこで、家を出る際、用意するべきものについてのリストお示ししたいと思います。

  • 被害者の日記やメモ
  • 被害行為や行為後の状況を撮影、録画した写真、ビデオテープなど
  • 加害行為によって壊された食器や家具
  • 目撃者の陳述書
  • 診断書、診察券、負傷状態の写真
  • 以前の被害地おどけ
  • 110番室同記録
  • 電話着信記録
  • 加害男性からの執拗な手紙やファックス、メールなど

このようなものを別居する際、持ち出しておくのは、男性、女性を問わず重要なポイントといえるかもしれません。
別居をしてしまうと、簡単には自宅には戻りにくくなるということになることも踏まえて別居するようにしましょう。

5.弁護士の関与

昔は、離婚調停や離婚裁判が起きてから弁護士が関与していました。しかし、その後、SIVといって、別居前後に突発的暴力やモラハラが起きやすいということが知られるようになると、別居の前後において、弁護士を窓口として置くことが一般的となりつつあります。法律専門家が代理をするというだけではなく、弁護士にも相談することができる安心感など、比較的不安な時期において、弁護士に依頼をするメリットは高いと考えられます。
このように、現在では、別居前から弁護士にご依頼いただいて、別居後の高葛藤に備えているケースが多いです。私たちは、DVやモラハラも含めた高葛藤案件の別居前の弁護活動も行ってきました。別居・離婚についてお悩みであれば、安藤一幹弁護士までご相談ください。

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