離婚後に行うべき10個の手続き
離婚したら、さまざまな手続きを行わねばなりません。親権者になったら、子どもの戸籍や姓の変更をしなければならないケースも多々あります。
今回は離婚後に行うべき手続きを解説しますので、ぜひ弁護士に法律相談してみてください。
1.離婚届の提出方法
離婚するときには、役所へ「離婚届」を提出しなければなりません。
協議離婚の場合だけではなく、調停離婚や裁判離婚でも離婚届は必要です。法的には、協議離婚は創設的届出、調停離婚や裁判離婚は既に離婚の効果は生じているので、報告的届出といわれています。
調停成立や判決確定後、10日以内に離婚届を提出しないと「過料」の制裁を加えられる可能性もあるので早めに対応しましょう。多くは氏を戻す女性側が離婚届けでの提出を担当することが多いですが、10日を経過した後は、男性側から提出されるという流れになっていると思います。
離婚届の際には、以下の書類が必要です。
- 離婚届(調停離婚や裁判離婚の場合、相手の署名押印は不要です。)
- 調停調書の謄本(調停で離婚する場合)
- 判決書と判決確定証明書(判決で離婚する場合)
- 和解調書(訴訟上の和解をもとに離婚する場合)
- 戸籍謄本(本籍地以外で離婚届を提出する場合)
2.離婚後の戸籍について
婚姻時に相手の戸籍に入った方は、離婚すると相手の戸籍から抜けます。その後の戸籍について、以下の2つのパターンから選択しなければなりません。
実家の戸籍に戻る
実家の戸籍に戻ると、自動的に名字も旧姓に戻ります。
ただし子どもと一緒に実家の戸籍に戻ることはできません。これを「親子三代戸籍禁止の原則」といいます。多くのケースでは、新しい戸籍を作られる方の方が多いという印象を受けます。
一度実家の戸籍から出て、離婚によって戻ってきたことが表記されるので、戸籍を一見して「離婚歴がある」とわかる状態になります。
なお、DVなどの件では、本籍地が判明していると戸籍の附票から住所が発覚することが多いので、一般的に推知されにくい場所に本籍を置くことをすすめています。
新しい自分ひとりの戸籍を作る
自分ひとりの戸籍を作る場合、旧姓に戻るか婚姻時の姓を名乗り続けるか選べますし子どもを自分の戸籍に入れることもできます。ただし子どもの戸籍を自分の籍に入れるには、別途家庭裁判所での手続きが必要です。
また実家の戸籍に戻る場合と異なり、本籍地は自分の好きな場所を指定できます。
3.離婚後の名字について
婚姻時に相手の名字に変わった方は離婚後の「名字」を選択できます。
実家の姓に戻ってもかまいませんし、婚姻時の姓を名乗り続けてもかまいません。
婚姻時の姓を名乗り続けるには、「婚氏続称届」を役所へ提出する必要があります。
婚氏続称届は必ずしも離婚届と同時に提出する必要はなく、離婚後3ヶ月以内であれば、受け付けてもらえます。それを過ぎると家庭裁判所で「氏の変更許可申立」という手続きをとらねばならないので、婚姻時の姓を名乗りたい方は早めに提出しましょう。また、こどもの氏を変更する場合においても「氏の変更許可申立」が必要となります。
4.住民票の異動
離婚して引っ越しをする場合には、住民票を異動させなければなりません。
引越し先が同一市町村内か他の市町村へ転出するかにより、手続きが異なります。
同一市町村内であれば、居住場所の役所で「転居届」を提出するだけなので簡単です。
他の市町村へ転出する場合、先に引越し前の住所の役所で「転出届」を提出して「転出証明書」を受け取らねばなりません。その上で転出先の市町村役場へ「転入届」を提出すれば住民票の異動が完了します。
住民票の手続き期限は引越し後2週間以内とされているので、遅れないように手続きを行いましょう。
5.健康保険の切り替え
離婚すると、健康保険を切り替えなければならないケースもあります。
これまで配偶者の扶養に入っていた方は、自分で新たに健康保険へ加入しなければなりません。
その際、自分の勤務先の社会保険に入る方法と国民健康保険に入る方法があります。
離婚後に働くなら、就職先の社会保険に入れてもらうとよいでしょう。
しばらく働かない方や社会保険が適用されない方の場合、国民健康保険へ入らなければなりません。
国民健康保険への切り替えには、これまで加入していた元配偶者の保険組合が発行する「資格喪失証明書」が必要です。資格喪失証明書とは、「健康保険の加入資格を失いました」と証明するための書類です。
また婚姻時に使っていた健康保険証を以前の健康保険組合へ返さねばなりません。
健康保険に空白期間が生じると一時的に実費負担が発生するため、速やかに(元)配偶者に健康保険証を返し、資格喪失証明書を渡してもらって切り替え手続きを進めましょう。
6.年金の切り替え
婚姻時に相手の扶養に入っていた方は、離婚後に年金の切り替えも行わねばなりません。
相手の扶養から抜けて自分で年金を収める必要があるのです。
就職して社会保険に入るなら、会社で手続きを進めてもらえます。
就職しない場合や社会保険が適用されない場合、市町村役場の窓口へ行って国民年金への切り替え手続きをしましょう。
届出の期限は離婚後2週間以内です。
このように、離婚後2週間に多くの手続が必要があることが分かります。
7.子どもの戸籍や姓の変更
離婚して親権者になる場合、子どもの戸籍や姓にも注意しなければなりません。
特に結婚時に相手の戸籍に入って名字が変わった方が親権者になる場合、子どもの戸籍と姓は相手の戸籍に残るので親権者と子どもの戸籍や姓が異なる状態になってしまいます。
日本では女性が男性の戸籍に入るケースが多いので、母親が親権者になると離婚後も子どもの戸籍は父親の戸籍に入ったままになります。この点は、勘違いされている方もいます。苗字も父親と同じになり、旧姓に戻った母親と名字が違う状態が発生するケースも少なくありません。
子どもの戸籍や姓を母親と同じに揃えるには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」という手続きを行う必要があります。
裁判所で氏の変更許可の審判が出たら、審判書と確定証明書を役所へ持参しましょう。子どもの戸籍を母親の戸籍に入れてもらえて名字も母親と同じにしてもらえます。離婚が理由の場合、幼少のこどもの氏の変更は比較的簡単に認められます。
子どもの戸籍や名字を変更する際の注意点
子どもの戸籍を母親の戸籍に入れる場合、母親の戸籍は「独立した戸籍」になります。実家の戸籍に入ったままでは子どもを母親の戸籍に入れられません。離婚の際に実家の戸籍に戻った場合、子の氏の変更許可の届出をすると新しい「母と子ども」の戸籍が作られます。元配偶者はこどもの部分の戸籍抄本や戸籍の附票をとれる可能性がありますので、簡単には推知されない場所に置く方が現在の個人情報保護の観点からは無難なのではないかと思います。
8.免許証やパスポート、クレジットカードなどの名義変更
離婚によって名字が変わったら、免許証やパスポートなどの公的書類の名義変更、預貯金やクレジットカード、生命保険などの名義変更をしなければなりません。
免許証は警察署、パスポートはパスポートセンター、預貯金口座については各種の金融機関、クレジットカードはクレジットカード会社など、それぞれの担当窓口へ個別に連絡する必要があります。ただし婚氏続称する場合、名義変更は不要です。
添付書類として、氏が変わった戸籍や住民票が必要になります。
住所が変わったら住所変更の手続きも同時に行いましょう。郵便局には転送届を出しておくようお勧めします。
9,財産分与に伴う名義変更
離婚時に以下のような財産分与を受けたら、財産の名義変更をしなければなりません。
- 不動産
離婚時に不動産の分与を受けたら、法務局へ名義変更登記の申請をしましょう。住所が変わるなら住所表記も変更する必要があります。自分で登記申請を行うのが難しいなら、司法書士へ依頼しましょう。財産分与の場合、登記は「対抗要件」としての意味を持っていますので、二重売買類似の関係に立ち登記をしなければ権利を失ってしまう可能性もないわけではありません。必ず登記を経由するようにしましょう。 - 自動車
離婚時に車の財産分与を受けたら、陸運支局などで車の名義変更をしなければなりません。
自分で行うことがほとんどですが、手間になる場合、行政書士などの専門家に依頼できます。 - 保険
財産分与により、子どもの学資保険などの契約者名義を変更するケースもよくあります。元配偶者を受取人にしていていた場合などでは、受取人も変更しなければなりません。
保険会社によって名義変更用の書式や必要書類が異なるので、それぞれ問い合わせをして書類を取り寄せて名義変更手続きを進めましょう。
10.年金分割
離婚にともなって年金分割を行う場合には、離婚後に年金事務所へ行って標準報酬改定請求書を提出しなければなりません。合意分割と3号分割で手続きの流れが異なります。
また年金分割は離婚後2年以内に行わないと受け付けてもらえなくなるので、注意しましょう。
年金分割についてはこちらの記事に詳しく書かれているので、ご参照ください。
当事務所の安藤一幹弁護士は、財産分与や婚姻費用の争いを得意とする、法律の専門家です。離婚する方への支援体制を整えております。離婚協議や調停から離婚後の手続きまで総合的にサポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。