親権について

未成年のこどもがいたら、離婚後に父母のどちらが親権者になるか、離婚する際、決めなければなりません。日本では離婚後の共同親権が認められないので、親権者を定めないと協議離婚もできません。この場合は、最終的に、「離婚訴訟」になることも見込まれますので、親権争いが顕在化しそうであればいずれにしても弁護士が必要になる可能性が高いといえるのではないでしょうか。

父母の双方が親権を希望すると話がまとまらず、大きなトラブルになってしまうケースが多々あります。DVなどの別居の際などの小競り合いなどの原因になることもあります。

今回は親権者を決めるための判断基準やもめたときの対処方法を弁護士が解説します。
親権を取得したい方はぜひご相談してみてください。

1.親権に含まれる2つの権利

親権とは、子どもを監護養育して財産を管理する権利です。
親権には「監護権」と「財産管理権」の2つの要素が含まれます。
もっとも、実際は、「財産管理権」については、こどもに財産があるケースが少ないといえます。親がなくなり生命保険金を管理しているなど特段の事情がある場合くらいに限られると思います。
親権の取得の場合、監護態勢が劣っている方や監護意欲がない方が強く取得を希望される場合もありますが、児童手当の給付があるから親権を取得を要求するというようなことは許されず、こどもに対して、その福祉に沿った安定した監護態勢を供給できるかどうかがポイントになるといえます。

監護権

監護権は、子どもと一緒に住んで面倒をみる権利です。養育責任といわれることもあります。衣食住の世話はもちろん、教育方針を決定して学校や塾、習い事などに通わせることも考えなければなりません。必要な範囲でしつけをすることも責任となります。

財産管理権

財産管理権は、子どもの財産を管理し法律行為を代行する権利です。
たとえば子ども名義の預貯金口座を作って管理したり、子どもが行う契約行為を代理したり子どもが交通事故に遭ったときに損害賠償金の示談交渉を行ったりします。

一般に「親権者」になれば上記の両方の権利が認められます。
婚姻中は両親の双方に親権が認められますが、離婚後はどちらか一方にしか親権が認められません。親権者にならなかった親は、子どもと一緒に暮らせませんし、財産管理する権利も失います。

2.親権者と監護権者を分ける方法

離婚時には両親のどちらか一方を親権者に定めなければなりません。
ただ両方が親権を望むケースもよくあります。するといつまでも離婚ができず、トラブルが大きくなります。そういった場合、まれに示談交渉の場合でのみ、「財産管理権としての親権」と「監護権」を分ける解決方法がとられます。
親権と監護権を分けた場合、親権者は子どもの財産を管理し、監護権者は子どもと一緒に住んで実際の監護養育を行います。
戸籍には「親権者」のみが記載され、「監護権者」は記載されません。
「親権者」といっても子どもと一緒に住めませんし、監護権者へ養育費を払わねばなりません。
もっとも、調停や裁判になった場合、原則として、監護権と親権の分属は認められません。こどもの財産はこどもの衣食住に密接に関わることが多く、親権者と監護権者が一致した方がスピーディーな判断をすることができるため、子の福祉にかなうため、分属は認めない傾向が強いといえます。
いずれにしても、父母両方の合意が必要であり、一方が、分属を希望しているだけでは、なかなか実現することは難しいかもしれません。

3.親権者を決める手順

離婚の際に親権者を決めるには、以下の手順で進めましょう。

STEP1 話し合う

まずは当事者同士で話し合って親権者を決めましょう。
合意できたら、離婚届の親権者の欄に取り決めた親権者を記載して役所へ提出します。
受理されると、決まったとおりに戸籍を書き換えてもらえます。

親権者と監護権者を分けるときには、「親権者」を離婚届に書いて提出しましょう。
また「養育費」と「面会交流」についても取り決めておくようお勧めします。

養育費について詳しくは、こちらの記事をご参照ください。

STEP2 離婚調停を申し立てる

自分たちで話し合っても親権者を決められない場合には、弁護士に相談のうえ、家庭裁判所で離婚調停を申し立てましょう。
調停では調停委員を交えて離婚条件についての話し合いを行います。
調停委員から解決案の提示を受けられるケースもありますし、親権を譲るよう相手を説得してもらえるケースもあります。
一方で、反対にこちらが親権を譲るよう説得されてしまう可能性もあり、必ずしも有利になるとは限りません。
離婚調停を有利に進めたい場合には、弁護士に代理を依頼する方がよいでしょう。

なお調停は話し合いで解決する方法なので、調停委員や調停官が親権者を決めることはありません。合意ができなければ調停は不成立になって終了します。

STEP3 離婚訴訟で親権者を指定してもらう

調停でも親権者を決められない場合、離婚訴訟を起こすしかありません。つまり、親権について、当初から紛争が潜在している場合は早めの弁護士への相談が望ましいといえます。
調停や子の監護者指定・引渡しの審判になれば裁判所がさまざまな調査を行い、離婚訴訟では家庭裁判所の補充の事実の調査により、その結果をもとに裁判官が親権者を指定します。
訴訟は調停までの段階と異なり、話し合いではありません。当事者が納得しなくても強制的に親権者が決められます。

訴訟で親権を勝ち取るには、調査官調査に適切に対応し、親権者として適切である事情を示す証拠をできるだけたくさん提出しなければなりません。
ご自身のみで対処すると不利になる可能性が高いので、必ず弁護士に依頼するようお勧めします。

4.裁判所における親権者の判断基準

訴訟で裁判所が親権者を決定するときには、以下のような基準によって判断します。

  • これまでの養育実績
    これまで積極的に育児に携わってきた親に親権が認められやすくなっています。
  • 離婚後、子どもと一緒に過ごせる時間
    離婚後、子どもと一緒に過ごせる時間が長い親に親権が認められやすい傾向があります。
  • 現在の子どもとの関係
    現在、子どもが強い愛着を持っていて関係の良好な親に親権が認められやすい傾向があります。
  • 子どもの年齢
    子どもが0~3歳くらいの乳幼児の場合、母親に親権が認められる例が多数です。
    学童期に入ってくると、父親にも親権が認められやすくなってきます。
    子どもが15歳以上になると、子どもの意思で親権者が決まります。
  • 現状、子どもと一緒に暮らしているかどうか
    夫婦が別居している場合、子どもと一緒に暮らしている親が有利です。ただし子どもが落ち着いて生活できている必要があり、環境が劣悪であれば相手親に親権が認められる可能性が高まります。
  • 健康状態
    心身ともに健康な親が親権者として適切と考えられます。ただしうつ病などの持病があっても、養育が可能な状態であれば親権者になれます。
  • 居住環境
    居住環境は良好であるに越したことはありません。たとえば一人暮らし用のワンルームマンションよりは複数の部屋がある住戸の方がよいでしょう。ただし家が広いから有利というわけではありません。
  • 経済状態
    経済状態も良好であるに越したことはありません。ただ資産や収入があれば親権を取得できるという意味ではなく、子どもの養育に足りる資力があれば充分です。
    収入が低くても相手から支払われる養育費や行政支援を合わせると養育できる状況であれば親権者になれます。
  • 面会交流に対する積極性
    裁判所は、別居親と子どもとの面会交流を積極的に行うべきと考えています。離婚後の面会交流を積極的に行う姿勢を見せた方が親権者として認められやすいでしょう。

5.親権を獲得するためのポイント

離婚の際、親権を獲得したければ以下のように対応しましょう。

子どもと離れない

離婚前に配偶者と別居する場合、子どもを相手に委ねてはなりません。
いったん離れると親権を獲得するのが困難になってしまうので、自分が家を出るなら子どもを連れて出ざるを得ない可能性があります。この点は、大阪高裁が、主たる監護者が引っ越しをする場合は監護されているこどもも移転するのが当然という趣旨の判断をしていることが参考になるでしょう。
また相手に子どもを連れ去られないように注意が必要です。

親権者として有利な資料を集める

訴訟になったら、裁判所が親権者を指定します。その際には「親権者として適切である証拠」を提出しなければなりません。
母子手帳、学校や幼稚園の連絡帳、写真や育児日記など、たくさんの資料を集めましょう。

子どもと積極的に関わり関係を良好にする

現在の子どもとの関係も重要です。
宿題をみてあげたり会話する時間を増やしたり習い事の練習につきあってあげたりして、積極的に関わりましょう。

離婚後も生活プランを検討する

離婚後、子どもと一緒に過ごせる時間を確保する必要があります。
フルタイムで働いている方は時短労働やフレックスタイム制の適用を検討するなどして、生活のスケジューリングをしましょう。

弁護士に相談する

親権を獲得するには、離婚交渉の当初から適切な対応をとらねばなりません。
初動がまずかったために後々まで悪影響が及び、親権を相手にとられてしまうケースも多々あります。親権については、前哨戦である「監護権」紛争で勝敗が決まっているケースが多く、初動の相談がもっとも肝要といえるでしょう。
当初から弁護士に相談していれば、自己判断で不利になる行動をとってしまうおそれはほとんどありません。むしろ相手の先手を取り、親権を獲得するために有効な対処を進められます。

父親でも親権を獲得できるケースは多数ありますし、経済力のない母親でも親権者になっている方がたくさんおられます。諦める必要はありませんので、「後悔のない離婚」とするために、お早めに弁護士までご相談ください。

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