熟年(50代・60代・70代)の離婚相談

熟年離婚では、若いご夫婦の離婚とは異なる悩みが発生するものです。

  • 財産分与額が大きくなる
  • 年金分割の重要性が高まる
  • 高齢の場合、離婚するより相手の遺産を相続したほうが有利になるケースがある

ご夫婦の年齢が50代、60代、70代となって婚姻期間が20年以上の長期に及ぶ離婚案件には、上記のような特徴があります。

この記事では熟年離婚で「後悔のない離婚にする」ためのポイントをご紹介しますので、ぜひ安藤一幹弁護士に法律相談してみてください。あなたの悩みが笑顔になります。

1.熟年離婚とは

「熟年離婚」とは、婚姻期間が長く夫婦の年齢も相当高くなっている場合の離婚です。
一般に「婚姻期間が20年以上」であれば「熟年離婚」といわれますが、厳密に「20年」が基準となるわけではありません。おおむねお子様が大学生に差し掛かろうとするという基準もあるかもしれません。

近年では昔と比べて熟年離婚されるご夫婦が多くみられるようになりました。それは、例えば、配偶者の父母の介護や配偶者自身の介護が現実的な問題となっていること、不倫などに耐えていたものの、こどもが成人をしたのを機に我慢する理由がなくなったなどが考えられます。

60代や70代、ときには80代で離婚を検討される方からご相談を受ける機会もあり、熟年離婚は決して珍しいものではありません。中には、相続を避けるための離婚もあり、緊急性もある事例もあります。

熟年離婚が増えている理由

熟年離婚が増えている理由として、改めて考えていきましょう。

離婚に対する意識の変化

従来の日本には「離婚は悪いこと、人生の失敗」という意識が根強くありましたが、最近では離婚が社会一般に受け入れられています。
若い人だけではなく50代以上の方にも離婚への抵抗感が減少し「今からでも離婚したい」と考える方が増えていると考えられます。
どちらかというと、「夫婦の耐用期間」が終わったとみる見方も多いと思います。

健康でアクティブなシニア層が増加

従来、「60代以上は老年」というイメージも強く「人生も終盤に差し掛かっているのに今から離婚するなんて意味がない」と考える風潮がありました。
しかし日本人の平均寿命はどんどん長くなっており「人生100年時代」といわれます。アクティブなシニア層が増加しており50代、60代はまだまだ若く、自分の人生を生きるために離婚を選択する方が増えています。また、財産分与制度の周知が、「今から離婚するなんて意味がない」という風潮が間違いとの見方も広がったのではないかと思います。

女性の社会進出

これまで女性は仕事をしていないケースも多く、離婚すると収入がなくて生活できない不安が強くありました。
しかし最近では女性の社会進出が進んでおり、職についている方も多数おられます。
経済力があれば無理に辛い結婚生活を我慢する必要はなく、離婚に踏み切る方が増えているのでしょう。そして、第二の人生では、自由に生きられたいという人生哲学が影響している可能性もあるかもしれません。

2.熟年離婚の特徴

熟年離婚には以下のような特徴があります。

財産分与が高額になる

財産分与は、婚姻中に形成した夫婦共有財産を離婚時に分け合うことです。
熟年離婚の場合、婚姻期間が長いので夫婦共有財産の種類や内容が複雑になり価額も高くなる傾向があります。

ただ、第二の人生の元手ともいえますから、単に高額という単純にとらえるべきではなく、第二の人生の中で、離婚給付をどのように位置づけられるかということです。
請求側は少しでも多く財産分与を受けたいと望み、支払う側は少しでも減らしたいと考えるでしょう。

特に夫の退職金が財産分与対象になるかどうかでもめたり、独身時代の財産と共有財産の切り分けが問題になったりするケースが多数です。

年金分割が重要になる

熟年離婚では「年金分割」も重要です。分けられる年金記録も多くなるからです。
年金分割は婚姻期間中に払い込んだ年金保険料を分割する制度なので、婚姻期間の長い熟年離婚の場合には分割によるインパクトが大きくなります。

請求者は「必ず年金分割してほしい」と望みますし、被分割者にとっては「できる限り応じたくない、分割割合を少なくしてほしい」と考えるでしょう。

また熟年離婚の場合、合意分割が適用されるケースがほとんどです。
平成20年3月以前の年金保険料については、妻が3号被保険者(夫の被扶養者)であっても3号分割を適用できません。夫(被分割者)の同意が必要となり、夫が年金分割を了承しないとトラブルにつながる可能性があります。

慰謝料が高額になる

夫や妻が不倫していた、婚姻期間中に暴力を振るわれていたなど、一方に有責性があれば離婚時に慰謝料を請求できます。

基本的に、婚姻期間が長期になるほど慰謝料額は高額になります。熟年離婚の場合、婚姻期間が20年を超えるケースも多いので、不倫や暴力、モラハラや生活費不払いなどにより慰謝料額は高くなるでしょう。支払う側と受け取る側の意見が一致せずトラブルにつながるケースが多々あります。

親権や養育費は問題になりにくい

熟年離婚の場合、子どもの親権や養育費、面会交流などの「子どもの問題」はクローズアップされにくくなります。
既に子どもが成人しているケースも多いですし、未成年でも高校生や大学生などになっており、自分で親権者や別居親との交流方法、進路などを決定できる15歳以上の年齢になっているためです。なお、成人年齢が18歳に引き下げるこどももまた、こどもの問題が大学の学費を除いては、問題が顕在化しにくいといえるでしょう。

3.熟年離婚を有利に進めるポイント

離婚後の生活計画を立てる

妻側も夫側も、離婚後の生活についてしっかり考えておくべきです。
年齢的に、離婚後の好条件による就職は困難となる可能性が高いでしょう。
このため、「経済的離婚」の要素は重要といえます。
離婚して世帯が2つに分かれると、食費や住居費、水道光熱費などの支出が増加します。
収入は増えないのに支出は増えるので、生活レベルを落とさざるを得ないケースが多数です。

また離婚後の住居についても考えておかねばなりません。

住宅ローンを払い終わっている家があるとしても、夫と妻のどちらが住むのか決める必要があります。家を受け取る側は、相手に対して家の価値の半額を財産分与として支払わねばなりません。
自宅以外に価値のある財産がなく、家の清算金を支払えない場合には、家を売却して現金で分けざるを得ない場合もよくあります。
ただ、相続可能財産がある場合もあり、この辺りは個別性があるといえそうです。

離婚後にどのくらいの収入を得られるのか、相続の見込み財産も考慮し、家賃を含めた支出はどのくらいになるのかなどシミュレーションして、計画を立てておきましょう。

財産分与の見込み額を把握する

熟年離婚では、財産分与をどのように行うかで夫婦双方の離婚後の生活が大きく変わってくるケースが少なくありません。
このため、財産分与に強い安藤一幹弁護士に相談するバリューがあるといえます。
妻は多く受け取れると離婚後の生活が安心です。これを実現できる可能性を高めるのに貢献するのが安藤一幹弁護士です。

また、夫はなるべく支払いを減らした方が安心して老後を過ごせるため、利害が対立してしまうのです。こうしたハードな利害対立にも安藤一幹弁護士の得意分野としています。

財産分与の方法は、夫婦の双方が納得すれば自由に決められますが、法律的には「婚姻中に形成した夫婦共有財産を2分の1ずつに分ける」のが基本です。

自分たち夫婦にどういった資産があり、2分の1にするとどのくらいの分与を受けられるのか(支払いが必要か)試算して見込額を把握しましょう。

熟年離婚の財産分与でもめやすいパターン

以下のような財産があると、財産分与でもめてしまう可能性が高くなります。特に、特有財産がある場合は必ず弁護士に相談しましょう。

  • どちらかの独身時代のお金や親からの支援で頭金を出して住宅ローンを組み、家を購入した
  • 将来受け取る予定の退職金がある
  • 独身時代から積み立てている保険がある

適正に財産分与を行って不利益を防止するには、弁護士の法的知識や会計知識が必要ですので、困ったときにはご相談ください。

年金分割を行う

熟年離婚をすると、老後は主に年金に頼って生活される方が多いので「年金分割」が非常に重要なポイントになります。

年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があり、合意分割するには被分割者(分割される人)の合意が必要です。相手と話し合って分割割合も取り決めて、「年金分割についての合意書」を作成しましょう。その上で年金事務所へ行けば合意分割ができます。
3号分割の場合、相手の合意は不要です。

なお50歳以上の方の場合、年金事務所に問い合わせれば年金分割後の年金受給額(見込み)を教えてもらえます。その金額を参考に離婚後の生活設計をしましょう。

4.長期別居後の遺産相続か離婚かの選択

60代や70代になってくると、離婚するより別居を続けて相手と死別した方が有利になる可能性があります。財産分与しなくても、財産の半分が法定相続の対象になる可能性があるからです。

離婚する場合

離婚すると財産分与を受けられますが、財産分与対象となるのは夫婦共有財産のみです。
基本的には2分の1ずつの割合で分けることになり、相手に財産隠しされる可能性もあります。

遺産相続する場合

相手と死別すると遺産相続できます。子どもがいる場合、配偶者の相続分は2分の1ですが子どもがいない場合には3分の2または4分の3となります。遺産相続の場合、共有財産に限らず特有財産も含めて相手の財産がすべて対象になるので財産分与より多くの資産を受け取れる可能性が高いでしょう。

また相手の死亡後は「遺族年金」を受給できるケースが多数です。年金分割後に受け取れる金額より遺族年金受給額の方が高額になるケースが少なくありません。

別居して相手から婚姻費用を受け取れるなら、あえて離婚を急ぐ必要がない場合も考えられます。他方、遺言によって、法定相続分どおりの遺産相続ができない可能性がないわけではありません。どちらが良いか迷われたら、安藤一幹弁護士へ相談してみてください。

当事務所では熟年離婚を希望される方への支援に力を入れています。いまでは当たり前ともいえる「特有財産」「隠し財産」その他、財産分与において、お悩みの方は安藤一幹弁護士にお気軽にご相談ください。

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